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イベントレポート

鍋講座 vol.57「インディペンデント映画のためのCG・VFX講座 vol.2」レポート

今回の鍋講座は、デジタルマットペインターの林隆之さん、映画監督の谷口広樹さん、井坂優介さんをゲストにお迎えして開催されました。3人はいずれも映画鍋会員です。司会は、独立映画鍋共同代表の土屋豊さんが務めました。

正直なところ、CG・VFXについては、用語も含めて私自身よくわかっていない部分が多くあります。講座が終わってから、前回の「インディペンデント映画のためのCG・VFX講座 vol.1」のレポートを確認したところ、そこにCGWORLDの「CG用語辞典」へのリンクが貼られていて、とてもわかりやすかったので、今回も参考リンクとして貼っておきます。

★前回レポート http://eiganabe.net/2024/11/03/3051
★CGWORLD「CG用語辞典」 https://cgworld.jp/terms/

専門用語が多い分野なので、初心者の私がどこまで正確にレポートできるかわからない部分もありますが、参加できなかった方にも参考になるよう、当日(2026年8月7日)の様子をできるだけ整理してお伝えできればと思います。

最初に、司会の土屋さんから挨拶と、今回の講座の趣旨説明がありました。

前回のCG・VFX講座 vol.1や、映画鍋の新年会などをきっかけに、林さん、谷口さん、井坂さんの出会いが生まれ、そこから実際に映画制作につながっていったこと。そのように、映画鍋の講座や交流の場から出会いが生まれ、作品につながっていくことは、とても素晴らしいことだと土屋さんは話されていました。今回の講座は、そうしたつながりから生まれた実践例をもとに、低予算の映画でも使えるCG・VFXの技術や考え方を紹介する回として開催されました。

続いて、登壇者の皆さんの自己紹介がありました。

林隆之さんは、現在TCA(東京コミュニケーションアート専門学校)で先生をされており、白組ではCMや映画のマット画を中心にお仕事をされているとのことです。一方で、インディペンデントの作り手たちと一緒に映画を作り、困ったことを一緒に考えて解決していくことを楽しいと感じていると話されていました。「何か相談ごとがあったら、ぜひお声がけください」という言葉もありました。

※林隆之さん

谷口広樹さんは、お金をかけずにスケール感のある映画を作っていると自己紹介されました。その過程で林さんにお世話になったとのことです。500万〜800万円ほどの予算で、終戦80年に寄せた戦争映画を制作したこと、また時代劇やアニメにも低予算で挑戦してきたことを話されていました。

※谷口広樹さん

井坂優介さんは、もともとアニメ会社に勤めていたこと、その後PFFに入選したことをきっかけに短編映画を作り続けてきたことを話されました。その後、長編映画『シャーマンの娘』を制作・公開。林さんと一緒に作った『真昼の蜘蛛隠れ』は、今年9月にカナザワ映画祭で上映予定とのことです。

※井坂優介さん

まず紹介されたのは、谷口さんの作品『神の島』です。谷口さんが林さんの力を借りて制作したVFXについて、谷口さんと林さんから具体的なお話がありました。

谷口さんによると、林さんに相談した時点で、撮影自体はすでに終わっていたそうです。谷口さんは、80年前の戦場を描くシーンを、小人数のスタッフでフィリピンのジャングルで撮影していました。場所そのものはそれなりに80年前の戦場に見えるものの、映像としてはどこか足りなさを感じていたそうです。現地では小道具も谷口さん自身が担当していたため、どうしても補いきれない部分がありました。そこで林さんに相談し、映像に「ハエ」を追加することをお願いしたとのことです。

林さんによると、ハエはCG素材として購入できるものがあり、今回はよい素材を1万円ほどで購入したそうです。その素材をTCAの生徒さんにアニメーションで動かしてもらい、最終的に林さんがまとめたとのことでした。ハエの影やフォーカスは、After Effectsで調整しているそうです。

また、こうした「後から映像に何かを乗せる」作業は、カメラが固定されているFIXの映像の方がやりやすい、というお話もありました。ただし、演出上どうしても手持ちで撮りたいシーンもあります。その場合は、まず手持ちで必要な映像を撮り、その後で同じ場所・同じ条件の固定映像も撮っておくとよいそうです。手持ちの映像に後からVFXで何かを加える場合、固定の素材もあることで、後の作業がしやすくなるということでした。

続いて、実際の人物と幽霊が同じ画面にいるシーンについても話がありました。林さんによると、もしVFXスーパーバイザーが現場にいれば、「こういうふうに撮ればいい」とその場で指示することができるとのことです。たとえば、幽霊がいる映像と、幽霊役の人にはけてもらった映像の2種類を、あらかじめ同じ場所で撮っておく。そうして素材を用意しておくと、後の作業がしやすくなるそうです。今ならAIが人を消してくれる場合もありますが、それでも林さんは「素材を撮っておかないと映画にはならない」と話されていました。

林さんのおすすめのソフトとしては、無料で使える3DCG制作ソフトとしてBlenderの紹介がありました。林さんご自身は、Mayaという3DCG制作ソフトを使っているそうです。

会場からは、「VFXスーパーバイザーはロケに連れて行った方がいいのか」という質問もありました。林さんの回答では、たとえばドローンなどで撮影していて、10人の兵隊が歩いている映像を後から30人くらいに増やしたい場合など、そこにいない人を新たに追加したり、人数を増やしたりする場合には、スーパーバイザーを連れて行った方がよいとのことでした。どう撮れば後から増やせるのかを、現場で判断する必要があるからです。林さんからは、「自分の作品で不安なことがあったら、どんどん聞いてください」という心強い言葉もありました。

次に、井坂優介さんの『真昼の蜘蛛隠れ』のVFXについて紹介がありました。井坂さんは、2025年の映画鍋新年会の二次会で林さんと出会い、その時に、これから撮る映画『真昼の蜘蛛隠れ』について話したそうです。その後、井坂さんが林さんへ依頼した内容を紹介し、林さんがどのように作ったのかを解説する形で話が進みました。

『真昼の蜘蛛隠れ』には、大きな蜘蛛のような存在が登場します。井坂さんからは、その蜘蛛のイメージについて、「六本木ヒルズにある巨大な蜘蛛のオブジェのようなもの」と伝えていたそうです。林さんは、そのイメージをもとに、蜘蛛の写真を使って制作を進めたとのことでした。Photoshopで素材を加工し、AIで3D化、生徒さんにボーン(骨)を入れてもらい、アニメーションにしたうえで、AIも使いながら仕上げていったそうです。

後半のQ&Aでは、この蜘蛛の作り方についてさらに詳しい質問もありました。六本木ヒルズの蜘蛛のオブジェは、世界中に同じものがあるため、足が8本見える写真を探し、その写真からPhotoshopで抜いたあと、AIで3D化して作ったという説明がありました。また、画像から3Dモデルを起こす無料のソフトとして、MeshyとTripoの紹介もありました。どちらも、画像を入れると3Dに起こしてくれるソフトとして紹介されていました。

井坂さんの映画では、その蜘蛛が昼にも夜にも登場します。林さんからは、暗い素材を撮る場合にも、VFXスーパーバイザーがいると必要な素材や撮り方について助言できる、という話がありました。さらに、フリーのAIソフトで深度マップ(デプスマップ)を作ってくれるという話もありました。深度マップは、画面の奥行きの情報を示すもので、VFXではとても重要になってくるそうです。

続いて、『真昼の蜘蛛隠れ』の中で、障子に映る蜘蛛の影をどのように作るかについても、林さんから説明がありました。林さんによると、まずは障子に別の影を映して、その影がどのように伸びるのかを撮っておくことが大切だそうです。また、障子に明かりを当てた映像だけでなく、照明を消した状態の障子だけの映像も撮っておく。そうした素材を数種類撮っておくことで、後から監督のイメージに近づけて作ることができる、という説明がありました。素材をどれだけ撮っておくかが、あとでVFXを行う際の自由度につながる。ここでも、前半から何度も出ていた「素材を撮っておくこと」の重要性が語られていました。

また、とても興味深かったのが、俳優さんの瞬きを減らすという話です。演技の中で、俳優さんの瞬きが少し多く見えることが気になり、井坂さんが林さんに相談したそうです。すると、After Effectsのトラッキングを使って、瞬きをしていない目を元の映像に乗せることができる、という説明がありました。After Effectsが映像の動きを追いかけてくれるため、元の俳優さんの顔の動きに合わせて、自然に目の素材を乗せることができるそうです。ただし、動かない基準点を探すのが難しいとのことでした。それでも、同じ人が自然にそこにいて演技をしているように見せることができるという話を聞いて、これはすごく使ってみたい技術だと思いました。

また、『真昼の蜘蛛隠れ』に登場する昼間の巨大な蜘蛛のシーンについても、撮影時の注意点が話されました。ピーカンの晴天で撮影する場合、後からフォグ、つまり霧のような効果を乗せるなら、少し絞って撮った方がよいそうです。その場合も、VFXスーパーバイザーやコンポジッターがいると、現場で必要な撮り方を判断しやすいというアドバイスがありました。

その後、会場の参加者からのQ&Aの時間が取られました。自分が作ってみたいシーンについての相談や、先ほど見た映像がどのように作られているのかといった質問が出ていました。その中で、林さんがVFXやCGで使うために、普段から写真を撮りためているのか、という質問がありました。林さんは、スマホでいつも素材になりそうな写真や4K映像を撮りためていると答えていました。

また、会場からは、VFXスーパーバイザーに相談するなら、いつの段階から相談するのがよいのか、という質問もありました。脚本段階から相談した方がよいのか、それとも別の段階がよいのか、という質問です。林さんの回答では、脚本段階で相談を受けることはあまりなく、監督が「こういう画を撮りたい」というイメージをスケッチや絵コンテで説明できるようになった段階で相談してもらうのがよい、とのことでした。

会場には、私の印象では、VFXやCGを普段仕事にしている方や、映画監督の方の参加が多かったように感じました。その後の打ち上げ会場でも、林さんに相談したい方たちが次々と林さんとお話しされていた様子が印象的でした。

林さん、そして貴重な作品をシェアしてくださった谷口さん、井坂さん、ありがとうございました。
(文責:大原とき緒)