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イベントレポート

鍋講座vol.51【自主上映会の企画と集客~インディペンデント映画を届けたい!~】レポート

実施概要
日程:2024年4月19日(金)19時00分開始、21時00分終了 
会場:下北沢アレイホール 

今回は「自主上映会」にフォーカスした鍋講座。劇場公開でもなく、映画祭でもなく「自主上映会」という手段でインディペンデント映画をうまく届ける方法はないものか、というテーマでお話しました。自主上映会といっても、民間主催のもの、学校主催のもの、制作者自ら企画するもの、有志や上映団体主催のものなど、さまざま。自主上映会は企画実施することは、さほど難しいことではありませんが、(上映会場と上映作品さえあれば実施可能)、集客や宣伝に関するノウハウはあまり共有されておらず、また知り合い関係者以外の方に来場していただくのは非常に困難なため、自主上映会の運営の実際について自主上映会を自ら企画運営している3人から話を聞きました。

■野火明(映画監督・TOKYO月イチ映画祭代表)
2013年から月に一度の映画祭『TOKYO月イチ映画祭』を開催。コロナの影響で一時休止していたが、2024年3月に再開。毎月開催されている。

■近藤勇一(外世界Xディレクター)
月例上映会『SF特撮映画セレクト』内にて外世界Xを開始。海外自主制作SF映画に日本語字幕をつけて上映している。

■斉藤 啓(神戸インディペンデント映画祭 代表・ディレクター)
神戸インディペンデント映画祭のセレクション作品上映会『神セレ』を2024年5月に渋谷ユーロライブにて初めて開催。

最初に上映会を始めたきっかけについて聞きました。野火明さんは、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭に参加した経験から、東京でもゆうばりのような上映会を、また月イチで開催してみようと開始。近藤勇一さんは海外映画祭への参加経験や海外フィルムメーカーとの交流から、「日本には海外SFジャンル映画を上映できる場所がない」という思いから始められました。

自主上映会の会場選定については、都内の貸館利用ができる会場一覧を投影しながら紹介。上映会の目的や趣旨、費用(会場使用料)、運営などの面から、会場選定する必要がありますが、野火さんは自社所有のスタジオで実施、近藤さんは上映会企画団体と連携する等の方法で開催しています。会場使用料が高額な場合は、多く集客できたとしても赤字になる場合があり、自主上映会を継続的に実施していきたい場合は、コスト面から実施会場の見直しが必要であると斉藤が自身の体験をもとに話しました。

自主上映会の集客方法については、チラシ、Web、SNS、動画、クチコミ、プレスリリース等さまざまな方法がありますが、インディペンデント映画の上映会の場合、有名俳優が出演している、特別な社会的テーマを題材にしている等がないかぎりは一般的興味をひきにくい状況もあり、集客は非常に困難であるという前提のもと、そんななかでも「見てみたい」「また行ってみたい」と映画ファンや制作者に感じてもらうために、見て満足できる上映作品の選定、お花見などの交流会をセットで企画する、上映会当日の写真を出品監督に共有する等、参加者満足度を高めるための施策をそれぞれ実施されていました。最近はSNSやWebで情報収集する人が多いので、「紙チラシはあえてつくらない」という判断も参考になりました。

「自主上映会を継続していくために」というテーマでは、上映会スタッフの役割分担を決めること、経費負担を極力すくなくすること、労力をかけすぎないこと(個人の負担を増やし過ぎない)、等の例があげられました。特に、参加者やスタッフが楽しめる環境を整えることが大事であると登壇者みなさんで確認されていました。上映会場のキャパ(席数)を大きくすると、集客目標があがり広報宣伝に係る労力と費用も増えるため、席数の多い会場を選ばないという判断も必要かと感じました。

※後日談
今回の鍋講座に参加した人が、後日、登壇ゲストの上映会に参加したという報告もありました。鍋講座や上映会に参加した人が、別のイベントや他作品にも興味を持ち行ってみる、という循環が起きていることにうれしく思いました。
(文責:斉藤啓)