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クリエイティブ・ドキュメンタリーの新しいコレクティブ 7年間の軌跡―旅立つ映画と作家たち

アジアのドキュメンタリー映画制作者のアーティスト・イン・レジデンス「山形ドキュメンタリー道場」。7回の開催を経て、ここから巣立って完成した映画が20本以上になりました。制作者の成果を広く知ってもらいたく、今年は6月と10月に東京で特集上映のイベントを行うことにしました。6月は、台湾からルオ・イシャン(「雪解けのあと」監督)、チェン・ヨンシュアン(「雪解けのあと」プロデューサー)、フィリピンからヴェニス・アティエンザ(「海での最後の日々」監督)が来日参加します。
https://ddcenter.org/dojotokyo/

特集上映 + トークセッション + 公開「乱稽古」
「道場」から生まれた映画や参加者の作品を上映し、作家やメンターによるトークセッションを行う。気鋭のアーティストとして国内外の映画ファンを魅了する小田香の『セノーテ』や小森はるかの最新作『春、阿賀の岸辺にて』。唯一無二の作品として観客動員を伸ばし続ける坂上香の『プリズン・サークル』や藤野知明の『どうすればよかったか?』。『雪解けのあと』の公開を目前に控えた台湾の新鋭ルオ・イシャンの『それから』。ベルリン国際映画祭ほか世界で激賞されたフィリピン出身のヴェニス・アティエンザの『海での最後の日々』(日本初上映)など、多彩な〈クリエイティブ・ドキュメンタリー〉をぜひスクリーンで。
さらに、「乱稽古」と呼ばれる「道場」の名物ワークショップを東京で開催。初めに参加者がフッテージやラフカットを上映し、プレゼンテーションを行なう。その後、ゆるやかな司会と日英同時通訳のもと、他の参加者とメンターたちと時間の許す限り意見を交換し合う。作家は、他者の声を聞き、問いに向き合うことで、自分自身の声と出合い直すことになる。この「いままさに映画が生まれようとしている時間」を初公開する。

山形ドキュメンタリー道場 in東京 2025 初夏篇
開催期間:2025年6月7日(土)~6月13日(金)
会場:専修大学 神田キャンパス 10号館/ユーロスペース

https://ddcenter.org/dojotokyo/

■上映作品
坂上香『プリズン・サークル』
工藤雅『Tracing for Traces』
大場丈夫『君は君でいい』
田中健太『風たちの学校』
ルオ・イシャン『それから』
池添俊『朝の夢』
ヴェニス・アティエンザ『海での最後の日々』
小田香『セノーテ』
藤野知明『どうすればよかったか?』
中村洸太『ポラン』
川上アチカ『絶唱浪曲ストーリー』
リアル・リザルディ『モニスメ』
奥間勝也『骨を掘る男』
小森はるか『春、阿賀の岸辺にて』

主催:ドキュメンタリー・ドリームセンター( Email:info@ddcenter.org )
企画協力・広報:アギィ
協力:専修大学 国際コミュニケーション学部、ユーロスペース
運営協力:映画祭を解剖する!運営メンバーほか有志
助成:公益財団法人東京都歴史文化財団 アーツカウンシル東京[東京芸術文化創造発信助成]

《「道場」に参加した映画作家たちのコメント》
道場から得たものは、勇気です。不安をいだきながらも舵をとる勇気。それを継続していくためには、他者に対する感性をみがき続けないといけない。道場でみなさんのお話を聞いていると、みんな各々の土地(立ち位置)で映画に向かい合っているとを感じました。あそこには誰がいて映画をしている、そっちにも、こっちにもという事実に、あたたかく背中を支えられています。
小田香(『セノーテ』監督/2018年「DOJO 1」参加)

家族以外の人に見せた最初の場でした。意外にも多くの人が私の映像や制作意図を肯定的に受け止めてくれ、作ってもいいのかもしれないと実感しました。自分の作品がどう受け止められるか、事前に知ることができました。具体的に制作の変更点・アイディアがいくつも出てきました。
藤野知明(『どうすればよかったか?』監督/2022年「DOJO 4」参加)

「道場」は「道(the way)」と「場(the place)」の二文字で構成されている。ひとつは動で、ひとつは静。ひとつは外で、ひとつは内。道場で、私たちは対立する物や感覚から、共存とバランスを探した。緊張とリラックス、有音と無音、見えるものと見えないもの、集団交流と個人、旅の目新しさと慣れた日常、温泉の熱さと雪の冷たさ……。そしてドキュメンタリーは、肘折に積もる雪にも似て、少しずつ積もり、凍っては溶け、時間の景色を形成していくのだ。
ルオ・イシャン(『雪解けのあと』監督/2023年「DOJO 5」参加)

おもに一人で撮影をしている私は、制作過程での具体的な葛藤や悩みを誰かと密に共有する機会をつくれていない。そんな私にとってこの道場は、解決に向かうためにアドバイスをもらったり、映画制作の方法論を教わったりするという感じではなく、本当に迷うべきところはどこにあるのかを教えてくれました。自分一人では絶対に気付けなかった根本的な問題を、他者の目を介したことで、その後一人の作業時間にも、目が研ぎ澄まされていく実感がありました。
小森はるか(『春、阿賀の岸辺にて』監督/2024年「DOJO 6」参加)