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イベントレポート

【レポート】映画業界本音ガイダンス2020 withコロナ

12月6日、「映画業界本音ガイダンス2020 withコロナ」がオンラインにて開催されました。この企画は今回3回目で、第1回が開催されたのは2017年、そのときの様子は詳細なレポートにて報告されているのでご興味あればぜひご一読ください。

映画業界の本音を知る場として

映画業界で働く人の大半はフリーランスという立場であって、当然一般企業のような「就職説明会」はほぼありません。映画業界を志す方は、自分自身の資質にあうかどうか、どんな現場があるのかは手探りにしか分からないまま、さまざまな縁を伝ってとにかく現場に飛び込んでいくことになるのですが、たまたまパワハラやセクハラなど労働環境に問題のある現場に最初にあたってしまい、業界に失望したり、またハラスメントに耐えられないことを適性のなさと思い込まされてしまったりして、映画業界を去っていく若者は後を立ちません。この業界にハラスメントはない!と言ってしまえば嘘になります。ただ、そうではない現場もあるし、ハラスメントをなくそうとしている座組もあります。

そういった俯瞰的な視点を提供したい、という思いをスタート地点に始まった企画で、業界の第一線で働く人々をお招きし、フリーランスのための就職説明会のような、質疑応答中心の「映画業界の本音を知る場」を設けています。参加無料で、高校生や大学生、映画業界を目指す「若者」(年齢制限はありません)を対象に、今回は初のオンライン開催ということで全国から応募があり、あっという間に定員の80名に達しました。オンラインであったのはコロナ禍ゆえにリアルでの集客が難しいという判断でしたが、結果として全国を対象に参加を呼びかけることができたのは不幸中の幸いでした。

決まったルートのない映画業界

ゲストは毎回、カメラマンや演出部、車輌部、配給から宣伝の方まで幅広くお声がけしています。今回のゲストは、映画のみならずCMやPVなどでも活躍されているスタイリストのキクチハナカさん、プロデューサーの戸山剛さん、ドキュメンタリーを中心に製作されているプロデューサー橋本佳子さん、撮影監督としても撮影助手としても活動される平見優子さん、現場の録音から仕上げまで担当される吉方淳二さんにお越し頂き、どうやって映画・映像の世界に入られたか、またそれぞれのお仕事の実際をお話いただきました。またファシリテーターである、映画監督の上本聡さん、私(深田)もパネリストとして参加、それぞれの体験を共有しました。

際立つのは、それぞれの出自の多様さです。専門学校から映像の道に進まれたキクチさん、まったく異業種から30代になってから映画の世界に移られた戸山さん、テレビ番組とドキュメンタリー映画の両輪で活動する橋本さん、大学生の頃にスタッフとして参加されたインディペンデント映画祭で築いた縁から映画撮影の現場に飛び込んだ平見さん、音楽の世界から映像音響も手がけるようになった吉方さん、俳優として演劇の世界で活動しながら監督へと転進した上本さん、そして映画学校出身で自主映画を作り続け今に至る私など。

かつて半世紀ほど前にはスタッフと俳優のほぼすべてが撮影スタジオと専属契約を結んでいましたが、そんな時代は遠い過去で、あるひとつの決まったルートがないのが当たり前となった映画業界だからこそ、それぞれの体験を共有し、現場の実際を伝えていく時間は重要であると感じました。質問は、時間内にはとても答えきれないほど、たくさん頂きました。オンラインゆえの気軽さからか、通常の対面で行われるイベントよりも多くの質問が出た印象です。答えきれなかった質問については、できるだけメールというかたちでお返ししていく予定です。

芸術文化の多様性をともに考える

芸術文化の多様性とは、結局のところ、芸術文化に携わる「人間」の多様性に他なりません。今、映画映像業界は十分に多様な人間を受け入れられるだけの安心安全な環境を準備できているのか。ジェンダーバランスは平等と言えるのか(言えません)。参加して下さった若者、ゲストとともに、そういったことを考えていく時間でもありました。
この企画はできる限り毎年、継続して行っていく予定です。来年度には2回、脚本家や編集部など今回お招きできなかった職掌の方をお招きし開催します。詳細が決まりましたら改めて公式サイトやSNSにて報告させて頂きます。

なお、この連続企画は「コープみらい財団 くらしと地域づくり助成」から助成を受けて実施しています。

(文責:深田晃司)