鍋講座 vol.56「どうする?映画づくりのお金 みんなでシェアする助成金情報」レポート
今回の鍋講座は、参加者同士で情報や意見をシェアする会でもあり、オフレコの内容も多く含まれていました。そのため、本レポートでは当日のすべてをそのまま掲載するのではなく、参加できなかった方にも共有できる範囲で、当日紹介された助成金や支援制度、関連サイトなどを最後にまとめて記載します。
当日は立ち見が出るほどの満席となり、100名近い方々にご参加いただきました。OKプロジェクトのお二人の人気、そして「映画づくりのお金」や助成金に対する関心の高さが、伝わってきました。

ゲストは、OKプロジェクトの金子由里奈さんと二井梓緒さん。お二人のお話の中でまず印象的だったのは、OKプロジェクトが法人でも任意団体でもない「集まり」として始まっているということです。お二人は出会い、お互いに「共に活動できる」という確信を持ってから動き出したそうです。そこには、利害関係というよりも、根本的な信頼関係やフィーリングのようなものがあるように感じられました。
二井さんが語っていた「金子さんに幸せになってほしい」という目標も、とても印象に残る言葉でした。映画を作るパートナーとして、誰かの才能を支える、誰かが幸せになることを目標にする。その姿勢は、とても新鮮に感じられました。
また、お二人は、海外のラボやマーケットの空気についても話されていました。そこでは秘密主義ではなく、フィルムメーカー同士が情報を共有し、映画の分野全体をどう発展させていくかに意識が向いている、というお話がありました。映画を作ることはとても大変で、どうしても自分の作品のことで精一杯になってしまいます。でも、自分一人だけがよければいいという視点では、映画の分野そのものはなかなか発展していかないのかもしれません。
お二人がOKプロジェクトを始めてから、まずは演劇を手弁当で上演するなど、とにかく実績を作っていったこと。そして、その活動の一環がポレポレ東中野の方の目に留まり、やがて映画化へとつながっていったという話も、とても興味深いものでした。
OKプロジェクトは、実際にさまざまな助成金や支援制度に応募し、その支援を受けながら、海外のマーケットにも参加してきたそうです。たとえば、金子さんは、文化庁の「日本映画の海外発信事業」によりベルリン国際映画祭の若手日本人監督海外プロモーションに参加したこと、さらに、VIPOの支援で釜山国際映画祭のAsian Contents & Film Market(ACFM)に参加できたことも話されていました。また、OKプロジェクトの長編企画は、ユニジャパンのFilm Frontierに選ばれ、カンヌのマーケットにも参加できたことが紹介されました。

※金子由里奈さん
通常、自費でマーケットに参加しようとすると数十万円かかるところを、支援制度を活用することで参加が可能になる。そうして海外のラボやマーケットの現場を見ることができた、というお話は、これから海外展開を考える映画作家にとっても具体的なヒントになるものでした。Film Frontierについては、支援期間が18か月と長く、企画開発費に加えて、海外渡航の支援もあるという説明がありました。また、VIPOのメルマガは「絶対に登録するように!」という助言もありました。
マーケットに参加していくと、数回参加するうちに同じ参加者同士で顔見知りになっていき、そうした積み重ねが信用につながったり、そこで新たにプロデューサーと出会ったりすることもあるそうです。また、映画祭のプログラマーなどの連絡先を得て、後日、自分の作品を売り込むことにつながる場合もあるという話もありました。
一方で、もし助成金が取れなかったとしても、ガッツがあれば映画祭やマーケットの場に個人として参加し、人が集まる場所で名刺や企画書を配り、つながりを作っていくこともできる。制度的な支援を得ることは大きな助けになりますが、それだけに頼らず、自分から動いていく姿勢の大切さも語られていました。
また、自分の作品を売り込むときには、「豪語」が大事だということ。自分の作品には価値があるのだと、きちんと伝えること。そして、作品そのものの魅力だけでなく、付加価値や社会的価値も書いた方がよい、というお話も印象に残りました。
お二人が助成金に挑戦し始めた頃には、そもそも助成金というものをよくわかっていなかったそうです。後から「助成金は採択された場合でもすぐにもらえるものではなく、後払いである」ということを知ったりしながら、応募経験のある方にヒアリングするなど、切磋琢磨しつつ、さまざまな制度にチャレンジしていったという話もありました。

※二井梓緒さん
後半になるにつれて、会場のお客さんからの発言も増えていきました。企画開発費がもっと増えてほしいという声や、プリプロダクション段階で使える支援がもっとあるとよい、という話も出ました。
「プロデューサーを探しているが、どういう場所で出会えばよいのか」という質問もありました。それに対して、フィルムラボやマーケット、映画関係者が集まる催しなどに出かけ、そこで話をしていくことから、一緒に作る関係につながることもある、という話が出ていました。助成金や制度だけでなく、人との出会いそのものが映画づくりの重要な入口になるのだと感じました。
会場からは、AIを使って助成金情報を集めたり、読みづらい募集要項を要約してもらったりすることもできるのではないか、というアイデアも出ました。また、助成団体によっては、落選した応募者や企画がどのくらいブラッシュアップしているかを見ているケースもあるそうです。落ちたから終わりではなく、継続して応募し、企画を育てていくことも大切なのだと感じました。
さらに、文化庁メディア芸術クリエイター育成支援事業、IMAGICA GROUPの映画支援、HAF(Hong Kong – Asia Film Financing Forum)、ダナン・アジア映画祭のプロジェクトマーケットなど、さまざまな支援制度やマーケット情報も共有されました。映画を作るためには、ひとつの助成金だけで全体をまかなうのではなく、プロダクション費用はこの支援から、ポストプロダクション費用は別の支援から、というように、いくつかの助成金を縫い合わせるようにして1本の映画を完成させていく。そのような考え方も共有されました。
また、映画鍋の共同代表である土屋豊さんからは、日本芸術文化振興会について、映画鍋がこれまで要望を重ねてきたことが多少なりとも制度の改善につながっているかもしれない、というお話もありました。現場から声を届けていくことの大切さを改めて感じる時間でもありました。

講座終了後には、場所を変えて打上げも行われました。そちらにも多くの方が参加してくださり、あちこちのテーブルで熱心に話し合いが続いていたように思います。講座の場だけでなく、その後の交流の時間も含めて、映画づくりのお金や支援制度について、参加者それぞれが情報を持ち寄り、つながりを作る機会になっていたのではないかと思います。
ご参加くださった皆さま、ありがとうございました。
そして、貴重なお話をしてくださったOKプロジェクトの金子由里奈さん、二井梓緒さん、本当にありがとうございました。
(文責:大原とき緒)
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当日紹介された主なサイト・支援制度
■Film Frontier
https://www.frontier.unijapan.org/
■VIPO
https://www.vipo.or.jp/
■ネットTAM
https://www.nettam.jp/
■助成財団センター
https://www.jfc.or.jp/
■AIR_J
https://air-j.info/
■J-Docs Hub
https://jdocshub.jp/
■アートノト
https://artnoto.jp/
■アーツカウンシル東京「カテゴリーⅣ[長期助成]海外映画祭参加活動」
https://www.artscouncil-tokyo.jp/grants/tokyo-grant-program/
■文化庁メディア芸術クリエイター育成支援事業
https://creators.j-mediaarts.bunka.go.jp/2026-entry





