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イベントレポート

【鍋講座vol.11】3回シリーズ「世界の映画行政を知る」第1回フランス編 レポート

2013年8月30日(金)19:00〜 @下北沢アレイホール
【ゲスト】
ヴァレリ=アンヌ・クリステン(ユニフランス・フィルムズ 東京支局長)
手束紀子(ユニフランス・フィルムズ東京 プロジェクト・マネージャー)

【ファシリテーター】
深田晃司(映画監督『歓待』『ほとりの朔子』)

第11回の鍋講座。テーマは、映画行政を知る!第1回フランス編。
ゲストはユニフランスのヴァレリアンヌさんと手束さんをお呼びした。実際にユニフランス・フィルム東京で勤務している2人からしか聞くことの出来ない貴重なお話に、会場に詰めかけた50名近くの観客からは多くの質問が浴びせられた!

主に話は、フランス映画業界と映画行政の実態などについて語られ、私たちは現在の日本映画業界と否応無しに比較せざるを得なかった。間違いなく世界の最先端を進むフランス映画行政への羨望の眼差しとともに、私たちは一体そこから何を学び、そしてこれからどうそれを活かしていき、日本映画業界に活路を見出すか?

フランス人の映画に対する意識の高さ
まず、手束さんから2012年の資料をもとにフランス映画の統計が示された。「20〜24歳が年に7、8回映画を観ている!」このデータは驚異的で、日本の若者の映画鑑賞回数はこの足下にも及ばない。それだけ、フランスは映画教育によって、幼少期から映画に親しみをもっている。それだけではなく、「映画料金の平均も日本円で約740円(2013/8現在のレートにて)」と日本より500円程安い。加えて、フランスは15年以上続く映画観放題のシステムが月2500円ほどで利用出来、多くの若者はこのシステムでたくさんの映画を鑑賞し、映画文化を肌にしみ込ませてゆく。
司会の深田監督が、「図書カードを子供に贈るみたいに、映画観放題のカードを気軽に渡せるような文化が日本にもあったらな」と思わず漏らしてしまう程、映画人にとってフランス映画業界は理想的な存在。こういった環境によって、幼少期から育まれる映画への意識の違いがフランス映画を文化的にも経済的にも支えているようだ。では、そのようにフランス映画文化を支える環境は、どのように作られているのだろうか?

ユニフランスの存在
フランスでは、ゲストの方々が所属するユニフランス・フィルムズが、フランス映画業界の発展に大きく貢献している。ユニフランスとは、「フランス映画産業の発展のため、フランス映画の普及を目的とし、1949年に設立されたプロモーション活動を全世界的に展開しているフランス文化・通信省の非営利の外郭団体。
活動は、「フランス国外でのフランス映画のプロモーション活動」、「海外映画市場データの収集と、フランス映画が海外で戦略的に展開するための情報共有」、「国際共同製作を含めたフランスの映画製作に対しての助成」など多岐に渡る。ユニフランスの予算は、その約80%が国立映像センター(CNC)から降りてきている。映画料金の中に、フランスではTSA特別税が約10%かけられており、年間でおよそ1億4000万ユーロの税収がCNCに入る。その他、フランスの放送局からも、法律によって決められた資金がCNCに納められる。そこから、ユニフランスへ予算がおり、そして制作者や公開時の助成金へと繋がっていく。つまり、「映画鑑賞時の税収→CNC→ユニフランス→制作・配給→観客の作品鑑賞機会の充実」というような形で、理想的な循環が生まれているのだ。こういった好循環を説明するゲストからは、フランス映画行政システムへの自負が感じられた。

アンテルミタン・デュ・スペクタクルとは!?
その他、労働環境でもフランスは特別である。アンテルミタン・デュ・スペクタクルと呼ばれる、芸術関係の労働従事者の為のシステムへの加入者は1987年から2006年の間に4万人から約12万人へと増加している。これは、年にある一定の労働時間を超えると、収入に応じて仕事のない月に国から手当が貰えるというもので、この制度を利用している人は平均して月25、6万円ほどの収入を得ている。年間を通して仕事量が不安定な芸術家も、ある程度安定した生活が営む事ができる。こういった芸術家からすれば、夢のような制度に対し、フランス国内からは税金の無駄遣いだという反発の声も少なからずある。しかし、「国民意識として映画や芸術はフランスにとって重要な文化資産だという考えが根強いので、アンテルミタン・デュ・スペクタクルは国民にも広く受け入れられている」こういったフランス人の芸術に対する意識の高さを象徴するようなヴァレリアンヌさんの発言が印象的だった。
では、なぜ日本は、フランスのように国や国民全体で映画を守り、発展させていくという姿勢を手本に出来ないのだろうか?

映画は、産業?芸術?
フランスでは韓国などのいくつかの国と合作協定を結んでおり、協定締結国との国際共同製作の際には、両国の映画助成をより効果的に受けられるような仕組みになっている。しかし、残念な事にフランスは日本とは、合作協定を結んでいない。それはなぜか?
その大きな理由として、ヴァレリアンヌさんから「行政の映画に対する意識の違い」が指摘された。先ほどまでの話にもあるように、フランスでは映画は芸術であり守られるべき文化資産という意識が強い。従って、フランスでは映画は芸術なのだ。これに対して「日本行政にとって、映画は靴と一緒なのだ」とヴァレリアンヌさんは言う。つまり、日本はアメリカと同じように映画をあくまで産業として捉えており、靴の生産や輸出入などの産業と一緒であるという考えなのだ。かたや、芸術。かたや、靴と同じ産業。そういったある種アイロニカルな対比が、日本とフランスの映画に対する意識の違いと合作協定を結べずにいる現状を浮き彫りにしているのだろう。
ここで、世界の映画行政を知る!というメインテーマに沿って考えれば、この意識の違いが、世界映画行政の最先端を行くフランスと韓国を知る上で、最も留意すべき事のように感じられた。

フランスと日本
講座の後半は、途切れる事なく会場から質問の嵐が浴びせられ、「フランスのシネコンやミニシアター、MK2の現状について」、「フランスで働く日本人映画関係者や日本人留学生は?」、「最近のオススメのフランス映画は?」、「河瀬直美監督がなぜフランスでこれほどまでにウケるのか?」などなど、今まで聞きたかったフランス映画業界の実情が露になっていった。
最後に手束さんからは、「フランス映画には、日本に配給されていない面白い映画がいっぱいある。こらからユーロスペースで上映される『女っ気なし』というフランス映画はぜひ観て欲しい。とのこと。また、フランスでは日本映画が2012年にはおよそ12本劇場公開と比較的健闘しており、フランス人は日本映画を良く観ている。フランスからすれば、日本のマーケットはとても重要であり、両国の映画は今後より一層、両国で劇場公開されていくだろう。
ムンバイへの赴任が決まっているヴァレリアンヌさんが、「日本は私の第2の故郷だ!」とおっしゃっているということを伺った。ユニフランスの方の日本への好意的な姿勢を目の当たりにし、私たちもフランス映画やフランスとの共同製作に歩み寄っていきたい。そう思わずにはいられない、フランス映画行政がより身近に感じられた講座となった。

参考資料:「役立つ情報」ページに、当日にゲストの方が準備されたスライド資料をアップロードしています(会員限定)。フランス映画市場概況や、劇場チケット収入の内訳、CNCの予算配分などを知ることができます。会員の方はぜひご利用ください。

(文責:歌川達人)