【鍋講座vol.9】法律編②「2人の弁護士に法律相談!」レポート
2013年6月7日19:00〜 下北沢アレイホール
【ゲスト】 田村祐一弁護士 西脇怜史弁護士
<司会:土屋豊、深田晃司>
今回は、「法律編② 2人の弁護士に法律相談!」といたしまして、田村先生と西脇先生をお招きし、映画制作にまつわる実際のケースを題材にお話頂いた。
雇用・保険・著作権などの実際に我々映像関係者が把握しなければならない議題がメインだったこともあり、会場の参加者から多くの質問が寄せられ、講座がより濃密な時間となった。
なお、会場席には「鍋講座vol.4法律編①」のゲストである末吉亙(すえよしわたる)弁護士がいらっしゃった。先生は、講座中、素人には難しい法律論を私たちが理解しやすくする為に多くの助言を下さり、講座の質疑応答がより深まった内容となった。お忙しい中、お越し頂いた末吉先生に感謝申し上げたい。
講座では、映画制作で起こりうる2つのケースを例に、弁護士の方々にレクチャー頂いた。
ケース1では、被害者編と題し、契約種類や保険、補償について、私たち映像制作者の労働環境に関することをテーマに話し合った。また、後半では先輩から新人君へのパワハラやセクハラと言った「新人の被害者」と「年配の加害者」という2つの側面で議論され、多様な参加者にとって身近なテーマとなった。
会場からは、実際のインディペンデント映画制作現場での雇用や保険の問題、さらに長時間労働やパワハラといった労働環境に関する生の声が飛び交い、日本の法律と実際の撮影現場の認識の違いや問題点が露になっていた。
後半のケース2では、加害者編と題し、「引用やパロディ、新著作物」などの著作権について、話し合われた。現代の情報社会に生きる私たち映像制作者が避けては通れない問題がテーマであったこともあり、会場内では多くの意見交換が行われた。
会場からは、実際の実体験を踏まえ、「どこまでが引用と認められ、どこからは認められないのか?また、パロディは認められるのか?」など実際に制作者では判断出来ないような切実な質問が多く寄せられた。その中で、引用部分以外で作家が創作性を存分に発揮することや、引用に至る文脈や目的が重要になってくるということが大筋の見解のように感じられた。
私たち、映像制作者は、どうしても映像業界という特殊な業界の常識に従って行動してしまう場合が多い。しかし、少し立ち止まり、その行動が法律や常識と照らし合わせて、本当に健全な行動なのだろうか?と、疑問を抱くこと。その疑問が多くの事件や問題を回避することに繋がるのではないだろうか。そういった意識の重要性を痛感した講座であった。
「いきなり弁護士に相談することは敷居が高いと思うかもしれない。しかし、もし疑問の思うことがあるならば、気にせず気軽に相談するべきだ。なぜなら、もしその相談が大きなトラブルを未然に防ぐことに繋がったのならば、それは最も重要なプリプロダクションの1つになり得るのだから」
そういった教訓が、ゲストの弁護士の方々のおかげで、理想論ではなく、実際に行うべき身近なプリプロダクションのように感じられる有意義な講座であった。これからの映像制作者には、ぜひとも法律専門家への相談という選択肢を検討して頂きたい。