鍋講座vol. 8「映画祭 サバイバル・キット!」レポート
「映画祭は“ご褒美”ではなく、仕事の現場です!」
「映画祭 サバイバル・キット!」と題された 第8回の映画鍋講座には、なんと70人を超える受講者が来場。これは鍋講座始まって以来の最大の受講者数となったのです。
若手の映像作家、俳優、プロデューサー、現役の映画祭プログラマーなどなど、様々な映画人が集まったこの日、講座は白熱!
近く映画祭に参加する監督も出席し、熱心な質問が飛ぶ一幕も。
将来海外映画祭を狙っている映像作家にとっても、貴重な経験になったはずです。
この日のゲスト講師は日本外国特派員協会のフィルム・キュレーション・ディレクターとして公開前の新作映画の上映イベントを担当しているキャレン・セバンズさん。
世界各国の多くの映画祭を渡り歩いた、映画祭の真のエキスパート。プロデューサー、監督としても映画製作に関わる豊富な経験を持つキャレンさんが、映画祭のサバイバル術を伝授して下さいました!
4,000の国際映画祭がある。
その中で、どの映画祭に参加するか、決めるためには、
• 知り合いのFilmmakerと話しをすること
• お互いの知識、経験をシェアすること
• リサーチを十分にすること
映画祭は、同じではない。それぞれに、個性がある。
1. 最近の世界の映画祭
まず、世界にはどんな映画祭があるのかを知る。
映画祭には大きく分けて、6つの種類がある。
① No-Time-to-Eat-or-Breathe Festivals
世界三大映画祭とされる、カンヌ、ベルリン、ヴェネツィアはとにかく忙し過ぎて、寝る時間もない映画祭。サンダンス、トロントも同様。
② Looks Like a #1, But with Jeans
世界三大よりは忙しくはないけれど、一流とされ、コンペティションがある、是非出品してみたい映画祭は、釜山、ロカルノ、ロッテルダム、BFIロンドン、トライベッカ、カルロヴィヴァリ。
③ Specialized Festivals
ドキュメンタリー、ファンタ、ホラーなど、カテゴリーが特化されたもの、例えば、シッチェス・カタロニア、ブリュッセル国際ファンタスティック、モントリオールファンタジア、など
④ The Regional Festival that Earns Lots of Local Pride
地方の映画祭 ハンプトン、ラスベガス、など。これらの映画祭はとにかくお金があること。賞金が大きかったり、招待されると、いいホテルに泊めてもらえたり、と要チェックなカテゴリー。
⑤ The “Unique” Regional Festival
ユニークな特色を持つ地方映画祭、ゆうばりファンタ国際映画祭などがこのタイプ。
3,678の映画祭がこのカテゴリーに所属する。
⑥ The Off-the-Beaten-Path Festival Where Magic Happens
有名ではないが、魔法のようなことが起こるかもしれない映画祭。ビジネス的な成功のチャンスもあるし、魅力的な開催地に移住してしまうかもしれないほど、素敵な思い出が作れる映画祭。ブラックナイト、ポルデノーネ無声映画祭、フェスパコ(ブルキナファソ)映画祭、DokuFest PRIZREN、などがあげられた。
2. 映画祭への準備
さて、無事映画祭へ出品が決まり、参加。
でもちょっと待って。映画祭に参加する前に周到な準備が必要では。
以下のものを用意するとスムーズに。
①上映素材のバックアップ
(現地でのトラブルに備える)
② 式典やパーティのスケジュール
(前もって日々のスケジュールを管理し、時間の無駄を省く)
③英語の名刺
④ 英語 ポストカード(500枚程度)
⑤ 英語版チラシ
(現物の日本語版を英語に訳すだけでは有効でない。各国に合わせてビジュアルを変えることも必要)
⑥ DVDサンプル
⑦ 英語のプレスキット
などを用意する。集客プロモーションにも利用できるし、他国の映画祭関係者やバイヤーにもアプローチ出来る。
あとせっかくビジネスチャンスに巡り会える機会なので、
●次回作のプロジェクトキット(シノプス、ビジュアル、絵コンテなど)
を用意。製作費を投資してくれるかもしれない人にあった時にチャンスを逃さないようにしたい。
●日本のお土産
また現地でお世話になったスタッフや、出会った人に渡せる簡単なお土産も用意したい。
これらの準備が整ったら、参加ゲストの中で会いたい人をリストアップ。
ウェブなどで顔を確認して、実際会った時に声をかけられるように覚えておく。
3. 取材やQ&Aの極意
映画祭に参加すると、取材やQ&A、またコンペティション部門出品であれば、記者会見などにも参加が必要不可欠。
① 取材
プレス、ジャーナリストに事前にメール(Facebook経由でも)してインタビューして欲しいとお願いしておくのも重要。
前もって自分なりに映画祭のスケジュールを組んでおき、インタビューの時間を事前に決めておけば、効率がよい。
② Q&A
観客からの質問には、事前に自分が何を一番PRできるか考えておくとよい。
よいQ&Aが出来れば、観客の印象もよいものになり、口コミにも反映される。
観客にどう自分の映画を理解してもらえるか、好きになってもらえるかを客観的に説明できるように事前準備をしておきたい。
そして、Smile!!人の印象の75%は会話の内容よりも表情、笑顔である。
③ Press Conference(記者会見)
5、6点の解答案を用意しておく(制作の経緯、裏話、苦労点、驚くエピソードなど)
④ 現地での宣伝
映画祭での上映時は、行列がつきもの。せっかく並んでいるので、その時間も作品のプロモーションに利用しよう。
まずは挨拶をしてみる。
「Hi. I’m a filmmaker. Come to see my film!」など。
チラシやポストカードを渡す。
また街中にポスターを貼るなど、積極的な戦略も考えたい。他のFilmmakerを出し抜きすぎると、法律違反の可能性があるので、注意。
4. パーティやレストランで売り込む
さて、せっかく映画祭へ参加しているのだから、日頃敷居が高くて出会えないような重要人物と話す機会があるかもしれない。
チャンスを逃さないために、下準備が有効。
① 映画祭で誰がどこにいるかを把握する。
パーティやマーケットで会えそうなら、そちらへ出向く。
② Elevator Pitch
エレベーターやトイレでばったりプロデューサーに出会ったりした際、次回作の企画を持ち込んでみては。
3センテンスで90秒以内で言えるように、あらかじめ、整理をしておく。
もし次回作に興味を持ってくれたら、次の3点を手短かに説明できるようにしておく。
1. Logline with “hook”
カテゴリー/ストーリー/テーマを25秒以内の時間で話す。
2. Casting Ideas
キャスティング。決定している必要はないが、すぐ答えられるようにしておく。
3. What film it resembles
It’s like <作品名> meets <作品名>
具体的に作品名の例出し、イメージがわきやすいようにする。
そして・・・
Why don’t we work together? と聞いてみる
何が起こるかわからない→とにかくトライしよう!
「映画祭は“ご褒美”ではなく、仕事の現場・・・」
楽しむことも重要だが、貴重な機会を無駄にしないように、とにかく下準備を周到にしておくのが大事。
開催地の地図、上映作品のスケジュール、パーティや会合の有無、取材してもらいたい媒体を事前に調べておく、など、やれることは無限にあるはず。事前準備が映画祭サバイバル術の肝のようです。
そして一番重要なのはコミュニケーション!
YOU are the best PR rep for your film!
いつも笑顔を忘れずに!
(レポート:植山英美、小澤真人)